十月一日 「この風紀委員の早坂小雪! 食べ物には二種類あると思うのっ」 「へぇ」 「甘いモノと甘くないモノ」 「早坂小雪よ、甘いモノばっか食ってんじゃないぞ。……ちなみに俺は三種類あると思うがな」 「どんな感じ?」 「喜んで食べられるモノと泣き喚いて嫌がるモノ、それと逃げ出すものだな」 「なにそれ」 |
十月三日 (金は天下の回りもの、とは言うがな) 「おう」 (俺たちだって一つの場所にじっくり腰を据えて落ち着きたいとか思ってんだよな) 「俺のサイフとかどう? 君ら使った後も帰ってくればいいし」 (お! それいいな。さっそく仲間呼びたいからちょっと銀行行ってくんね?) 「……いや、やっぱ止めて。俺も一応、人としてのルールは守らなくちゃならんし」 (ちっ。超能力者のくせに気の弱いやつめ) 「超能力者とか恥ずかしい呼び方も止めてくれ」 |
十月四日 (この地区はー! 以前からー! 我々のー! 重要なー! 食料供給基地なのであーる!) (我々ー! 白羽同盟はー! 諸君らのー! 即時撤退をー! 要請するー!) (我らー! 黒翼連合はー! その要請をー! 断固としてー! 拒否するー!) (ナワバリはー! 強いモノが手に入れるべきものであってー! 古い慣習などはー! 我らには通用しないのであーる!) (お、おのれぃ。大人しくしていれば調子に乗りおって! 白羽同盟の力、見せてくれる! ……いざ出撃!) (了解! 一番隊、前へ!) (((Sir! Yes,Sir!!))) (ふふふ。白羽同盟風情がきゃんきゃん吼えておるわ。黒翼連合の前に屈服させてやろうぞ。……捻りつぶせぃ!) (仰せのままに。モノども! 出会えぃ!) (((おおおおおおお!!))) 「う、うわー。公園で、エサ持ったお爺さんの周りのハトとカラスがすごいケンカしてる……」 「とうとう始まってしまったか……。ナワバリ紛争調停委員会として、これから忙しくなりそうだな」 「え? 今何か言った?」 「いや別に」 |
十月五日 (ねぇねぇ) 「なんだよシャーペン」 (あそこでスクラッチくじやってるわよ。アンタ会話できるんだからやってきたら?) 「んー。やめとく。ってか近寄りたくない」 (何でよ? お金欲しくないの?) 「金は欲しいが……。あいつらプロ意識強いからなぁ。話し掛けても無視されんだよな」 (へー。それは感心ねぇ) 「その一方で削られた後のやつらは打って変わってお喋りになるから、すんげぇウルサイの」 (そうなんだ) 「……昔、まとめ買いして説得を試みたんだが無理でな。仕方なく自力でやったら全部ハズレで。 オマケにハズレくじたちがゴミ箱の中でドンチャン騒ぎするから寝不足に悩まされたことが」 (そ、そんなことが……でもまぁ自業自得じゃ……) 「思わず、くじたちを焼却処分してしまったぜ」 (ひどっ!) |
十月十日 「委員長ー。一緒に昼飯食べないか? また屋上で」 「ご、ごめん。今日は文芸部の娘たちと食べる約束しちゃってて……」 「そっか。ならいいや」 「本当にごめんね……」 「気にすんなよ」 「……ま、また誘って欲し……」 「んじゃ」 「風紀委員の早坂小雪!」 「なんだキミは! いきなり人の教室に来て!」 「昼飯を一緒に食わんかと誘いに来た。屋上とかで。どうだろう」 「何の用事かと思ったらそんなことかっ。なーんでこの風紀委員の早坂小雪がキミとゴハンを食べなきゃいけないのだっ」 「じゃあいいや。邪魔したな」 「でもキミがどうしてもって言うんなら……って! ……ああ、いっちゃった。……あーあ」 「一緒に食べる相手がいない。教室は学食に行く奴らばっかで人がいない。……ならば!」 (勝負というワケだな!) (我らとてそうそう簡単には捕まらんぞ!) (おうとも!) (かかってこいやぁ!) 「焼きそばパンにメロンパン、アンパンにソーセージパン! 大人しく俺の腹に収まるがいい!!」 「……はぁはぁ。きょ、今日の戦果はアンパンとメロンパンか。人が見てないと奴ら逃げ回るから困る。 ……焼きそばパン、食べたかったなぁ」 |
十月十一日 「あ、あの……」 「ん? どうした委員長」 「昨日はお誘い断っちゃってごめんね?」 「そんなわざわざ謝ることでもないだろー」 「う、うん。それで今日は一緒にお昼どうかな……?」 「悪いな。今日は野郎どもと食べるから。また今度なー」 「そ、そう……」 「……今日は誘いに来ないのかな。この風紀委員の早坂小雪、同じ失敗はしないから次はがんばるんだけどな……」 「やっぱりトモダチっていいなぁ。みんなと一緒に食べるとお腹いっぱいだなぁ!」 (く、くそう……! 人目があると逃げられないぃぃ) (しょ、勝負しろぉっ。タイマンで勝負しろー!) 「ふはは。え? 何でそんな勝ち誇りながらパン喰ってんのかって? まぁ気にするなよ」 |