九月二十四日 (旦那旦那! ミーを借りてかない? 全米を泣かせたんだゼ? ミーは) (俺も俺も! 俺だって全米を震撼させたぜ!) (僕も全米ナンバー1だよ!) (はっ! 毎回毎回泣いたり震撼したり。しかもナンバー1ばっかり! 白々しいんだよ洋画どもはよぉ!) (んだんだ。男ならやっぱ邦画だべ? 時代劇か極道、金融モノを観るべきだべよ) (それか連ドラだな。昔のも結構いい味でてるぞー) (坊や―? お姉さんたちも見てかなーい?) (魅惑の18禁コーナーはこちらでーすっ) (制服着てなきゃ大丈夫だって。ねっ、ねっ?) 「静かに選ばせてくれよ。……うん、今回はこれだな」 (((特撮ヒーローモノかよ!!))) 「うっさい! ほっとけ!」 |
九月二十五日 「夏休みの時の話なんだけどさっ」 「いきなりだな。風紀委員の早坂小雪」 「聞いてよ。部活の合宿で校舎に泊り込んでて、ちょっと夜中に肝試ししてたんだけど……」 「早坂小雪って確か文芸部だろ? 何で合宿なんかすんの?」 「聞いてよ! 音楽室の前を通ったらねっ。ピアノの音が聞こえてきたの」 「風紀委員の癖に夜の校舎をうろつくとはワルだな」 「ほっといてよ! でね、勇気出して入ってみたんだけど誰もいなかったの」 「ほぉー」 「怪奇げんしょー初体験だったってわけっ」 「初体験って響きが何かやらし……あいたっ」 「風紀を乱さないっ」 「……という話を聞いたんですけど、心当たりは?」 (失礼じゃのぅ。ワシは身体が鈍らないように自主的に演奏しとっただけなんじゃがのぉ) 「ご老体。色んな意味であまりご無理はなさらないように」 |
九月二十六日 「モノが多くて騒がしい百円ショップ。消耗品だけ買って、さっさと帰りましょっとな」 (……) 「えーとアレはどこかな……。ん」 (む) 「……えーと」 (おい、目を逸らすんじゃねぇよコラ) 「何の話だ」 (今オレと目が合っただろコノヤロウ。これも何かの縁だ。オレを買ってけ) 「……フルフェイスのチャイニーズなマスクが必要な用事は別にないんだがな」 (バカヤロウ! オレが必要な用事のあるヤツがそうそういるワケねーだろうが、ボケが!) 「キレるなキレるな」 (誰もオレを買ってかないだよ! たまにガキどもがふざけて被ってくくらいでよぉ!) 「……」 (年末ならまだ忘年会なんぞで売れることもあるんだろうがなぁ! 今の時期は売れねぇんだよ!) 「……」 (今の時期だとガキどもに遊ばれてるうちに汚れちまって、売り物にならなくなっちまうんだよぉ!) 「……」 (で、挙句の果てに店内破損で処分されちまうんだよ!) 「気の毒に……」 (だろ!? だから人助けと思ってオレを買ってけ。文化祭とか運動会なら使えないこともないだろ?) 「まぁ確かに」 (おし! 話のわかるヤツで助かっ……) 「でも俺はやっぱりいらないや」 (ひ、人でなしぃぃぃ!!) |
九月二十八日 「……だと思うの」 「ほぉ」 (もっと親身になって訊いてあげなきゃダメよ。ちなみに私の意見はー……) 「……はどう思う?」 「俺も委員長の言う通りだと思うぞ」 (オウム返しでどうするの! ほら、さっきの私の意見伝えて伝えて。あ、あと委員長じゃなくて名前で呼んであげなきゃ) 「……あ。ご、ごめんね? こんな下らないことで長々と電話しちゃって」 「気にするなよ」 (あー。年頃の男女の会話って良いわねぇ。お姉さん何かワクワクしてきちゃうんだけど) (アイツってばケータイさんで喋ってる時はいっつもイライラした顔してるわねぇ) (まったくでやんすな。まぁイチイチ会話に口挟まれてたら無理もないでやんしょ) (ってまた勝手には入ってきたわねっ。働き蟻1964! サボってないで仕事してきなさいよ) (つれないこと言わねぇで欲しいでやんすよ。シャーペンのお嬢。それに、あっしは3874でやんす) (アイツじゃないんだから蟻の見分けなんか出来ないわよ!) (はぁ……早くお電話終わって、また何かお菓子くれないでやんすかねぇ) (無視しないの!) (それは駄洒落でやんすか?) (……撃ち殺すわよ?) (じょ、冗談でやんす。芯を発射するのは止めて欲しいでやんす) |
九月二十九日 (最近涼しくなってきましたねぇ。ご主人) 「ううう……」 (朝方なんかちょっと肌寒かったりしますよねぇ) 「むぐぐ……」 (いやぁ、人肌ってホントいいものですねっ) 「離せ……! 遅刻するだろうが……!」 (あと五分、五分だけお願いしますよぉ) 「いい加減にしろ布団! 子猫でも呼んできてやるから!」 |