四月一日
「やぁキミかっ。この後、文芸部のみんなで遊びに行くんだけど一緒に来るっ?」

「あー。無理無理」

「いつもヒマそうにしてるくせにっ。何か予定でもっ?」

「いやぁ最近彼女できてな。これからデートなんだよー」

「……えっ?」

「早坂小雪も合コンでもしてオトコ捕まえてこいよ。カレシカノジョってのも悪くないもんだぜ?」

「……」

「今度プレゼントとかの相談でもさせてもらおうかな……って何故泣く」

「……うぇっ、うえぇぇぇんっ」

「そんなうずくまってマジ泣きしないでくれよ……。……よし、委員長。一言頼む」

「小雪ちゃん小雪ちゃん」

「ううっ、ぐすっ、うあぁぁっ……」

「今日は四月一日よ。エイプリルフールよ。四月馬鹿なのよ」

「……へ?」

「まさか泣かれるとは思わなかった……」

「……ウソなのっ?」

「彼女はいないなぁ」

「……バカっ! バカッ! バカッーーー!!」

「いたっ。いたいっ。殴るなよオイ」

「うるさいっ! この早坂小雪が感じた痛みの万分の一でも味わえっ!」

「なんのことだ? ……って痛いって!」



「……小雪ちゃんは美味しいトコ持ってくなぁ」




四月二日
「あのね。わかってんのアンタ?」

「悪かったって……」

「いーや。ダンナはわかってないのにゃあ」

「まったく昨日のアレは何? 女心を弄ぶなんて最低よ」

「そうにゃ。シャーペンさんから話は聞いたけど酷い話にゃ」

「そうそう」

「なんで彼女はウチとはっきり言わなかったのにゃあ」

「……って違うでしょ!」

「えー。そういう話じゃなかったのにゃあ?」

「違う!」





「……妖刀先生ー。散歩でも行こうぜー」

「おお、行く行く」





「あ、コラ! 逃げるんじゃないわよ!」





「先生! ワープだワープ!」

「ははは。忙しないのぉ」


四月九日
(うおおおおおお!!)

(ぬおりゃぁぁぁああ!)

(負ける……かぁ!)



「せっかく桜が咲いてるのに、雨が続くわねー」

「だなぁ」



(散ってたまるもんかよぉぉ)

(まだだ、まだ散らねぇ!)



「……暑苦しくてかなわんな」

「そう? むしろちょっと冷えるくらいだと思うけど」




四月十日
「何か重いなー」

(失礼ね)

「物理的にじゃなくて、動作が重いってんだよ。パソコン」

(ふ、ふーん)

「……なんだコレ。何でこんな容量少なくなってんだ?」

(ウ、ウイルスでも拾ったんじゃないの?)

「まさか。……隠しフォルダ? ……何だ、この大量の深海魚画像は」

(いやぁぁぁ見ないでぇぇぇ!!)

「20GB分も貯め込むなよ……凄まじい量だな」

(趣味なの……許して……)

「……仕方ねぇなぁ。今度外付けハードディスクでも買ってくるよ」




四月十三日
「まずいっ。まずいよっ!」

「どうした早坂小雪」

「そろそろ葉桜になってきた感じだよっ。お花見するなら急がないとっ」

「桜なんて登下校の時にちょろっと見ればいいじゃないか」

「この非国民めーっ!」

「いった!? 木刀で殴るなよ」

「お花見をしないウチは新年度は始まらないのっ! 次の日曜はお花見っ。いいねっ」

「いいけどよ……」

「よしっ! じゃあお弁当を委員長と一緒に用意しなきゃっ。やほーっ」

「どんなけ花見が好きなんだよ早坂小雪」









BACKTOPNEXT