九月一日
「夏ももう終わりだなぁ」

「海に行ったり川に行ったり湖に行ったり色々遊んだよねっ」

「今思えば泳いでばっかだったな。どうせなら山にも行けば良かった」

「夏は海、川、湖だよっ! 水と戯れて正解っ! だから今年は大満足っ」

「まぁ早坂小雪が満足してるんならいいんだけど」

「でもそれだけ遊んだのに記憶に無いのは何故かしら……?」

「ははは。気にすんなよ委員長」


九月ニ日
「だるい。夏休みはしょっちゅう昼まで寝てたからすごくだるいぞ」

(ここしばらくはダンナはウチら側に来てたからにゃあ)

「ああ、ネコライフは良かった……。もうずっと寝ていたかった……」

(かったるい会話してるじゃないの。ほら、いい加減しゃきっとした生活に戻らないと)

「そうは言うがな、シャーペン」

(何よ)

「もともと普段からそんなにしゃきっとしてないぜ?」

(ぜ? じゃない!)

「いって! つつくなよー」


九月三日
「すっかり秋だなぁ」

(秋だにゃあ)

「……秋だな」

(秋だにゃあ……)

「……秋」

(にゃー)

「……秋まだぁ?」

(いつまで暑いんだにゃあー……)

(見てて鬱陶しいわよ)

「無機物には俺らの苦しみはわからんぜ……」

(まったくにゃあ……)

(見てると無機物で良かったなって思えてくるわねー)


九月六日
「読書の秋ね。文芸部としてはどんどん本を読んでいかないと」

「まったくだね委員長っ。クーラーの効いた図書室で涼んでるのが一番だねっ」

「小雪ちゃん。その辺はオブラードに包まないと」

「何読もうかなーっ」

「たまには定番もいいものよ? 太宰とか夏目とかその辺り」

「なるほどねっ。委員長の読んでるそれは二葉亭かっ。渋いね……ってああっ」

「……ふふふ。表紙はダミーよ」

「お、男の人のハダカがくんづほぐれつだぁぁぁっ!?」


九月十ニ日
(ちくしょう……!)

「どうした。我が家の軽自動車」

(昨日親父さんに洗ってもらったばっかりなのにもう雨が降ってきやがった……)

「あー」

(月に一回しか洗車してもらえないのに! くそう、雨に一言言ってやってくれよ!)

「……今降ってるし一応言ってみるか」



(どうだって!?)

「我々の一存では何とも。上に言ってもらわないと……だとさ」

(何でお役所気質なんだよ!)


九月十三日
「そろそろ涼しくなってきたかな」

(ようやく私の出番も終わりですかね)

「今年はよく働いてもらったなぁクーラーよ」

(いえいえ。ところで出番が終わるからにはやることが一つ残ってませんかね)

「はて」

(ほら、わかりませんかね)

「さて」

(最後にフィルターの掃除くらいしてくれてもいいんじゃないですかね)

「もうまた来年でいいじゃんよー」


九月二十一日
「あー……思ったよりいい感じだなこりゃ」

「人間っちゅうんはやっかいなもんだのぉ」

(ちょっとちょっと! 何で妖刀先生にべったりくっついてんのアンタは!)

「いや、暑くてな……」

(だったら何でくっついてんの!)

「妖刀先生の身体はひんやりしてて気持ちいいんだよ」

「まぁ、日本刀だからの。妖気も帯びてるからヒンヤリ感には自信ありだの」

「というわけだ。……あーくつろぐくつろぐ」

(け、けしからん光景だわ)

「どーでもいいが、抱き枕にされる妖刀ってワシくらいではなかろーか」


九月二十五日
「ナナメ45度でチョッ……」

(待て。待ってくれ)

「何だテレビ」

(チョップはカンベンしてくれホントに)

「だってお前映り悪いし。チョップの一つや二つくれてやらないと」

(待ち待ち。今気合入れるから……ほっ!)

「ん。映り良くなったな」

(……ダメだぁ)

「ナナメ45度でチョーップ!」

(ぐひゃあっ)


=4十月一日
「何が不満なんだよ」

(むー)

「俺はちゃんと綺麗に使ってるじゃないか。落書きもしたことないし」

(……むー!)

「参ったなぁ」





「やぁっ。悪いんだけどちょっと数学の教科書貸してくれないかなっ。この早坂小雪としたことが迂闊だよっ」

「構わんぞ。ほい」

「ありがとっ。……ほほぅっ。随分とキレイに使ってるねっ。まるで新品っ」

「だろー?」

「ってあんまり使ってないってことじゃんっ。大事なトコにライン引くくらいするべきっ」

「そういうの面倒で。……ってああそういうことか」

「んんっ?」

(ぶすー)


十月十七日
――ボンッ!!



(ぎゃぁあああ!!)

「……失敗したか」

(何で!? 何で俺に卵入れるの!? 電子レンジに卵入れちゃダメなのは常識だろ!?)

「こないだテレビで電子レンジで卵を茹でる方法ってのを観てなぁ」

(それで試したくなったってか!)

「おぉ」

(失敗してんじゃん! 生活の知恵活かせてないじゃん!)

「すまん、俺が悪かった」

(ホント勘弁して欲しいよ……)

「……次は失敗しないからよ」

(誰か助けてー!?)


十月二十二日
「雑魚どもめ! 我が刃の錆にしてくれる!!」

(うわぁぁぁ)

「貴様は細切れにしてやるっ」

(あいやー)

「話にならんな。敗者は火にくべてくれる」

(あーれー)





「いただきます」

「うむ。おあがりなさい」

「うん、美味い。先生いつの間に料理なんか覚えたんだ?」

「いやぁ何でもいいから切りたくてのぉ。あと昼間はヒマでの」

「たまには博物館に帰ろうぜ……。にしてもこのカレー、具がないのな」

「おうとも。具材は全て細かく刻んだから溶け込んでおるぞ」

「確かにコクがあるなー」









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