一月四日
「何に使おうかなぁ、お年玉。貴重な収入だから考えて使わないと」

(はー……)

「何だよ。何か疲れてるな、お年玉、というか紙幣くん」

(年末年始は移動が多くて疲れたんですよ……。少しくらいゆっくりしたいもんです……)

「……わかったよ。じゃあお前はタンス預金にでもしておくよ」

(ありがとうございます。……なんだ、仲間少ないなぁ)

「それはほっとけ」


一月七日
「どこからか悲痛な声がする……」

(酷いよー……あんまりだよー……)

「どこだー? ……ああ、お前か」

(ううう……)

「鏡餅の上の蜜柑。なに泣いてんだよ。めでたい存在のくせに」

(いつまでもボクをモチの上に置きっぱなしにしてるから……)

「してるから?」

(く、腐っちゃったじゃないか。適当に交換してくれれば良かったのにぃぃ)

「あー……。オブジェの一環と化してからな。ぬかったぜ」

(責任とってよ!)

「仕方ないなぁ……」

(あ、あれ? ホントに責任とってくれるの? でも腐ってるから食べるなら胃薬を……って!?)

「責任とってちゃんとゴミ箱に捨てる」

(あんまりだー!?)


一月九日
「テレビ調子悪いなー」

(いやぁ、悪ぃな。オレももう年だからサ)

「もうちょっと何とかならんのか」

(オレにはどうにもこうにも)

「ならば!」

(あいて!? ナニすんだ!)

「ナナメ50度で!」

(いてぇ!)

「打つべし! 打つべし!」

(いたっ! 痛いって!)

「よーし。直った直った」

(ひでぇよダンナ……)


一月十六日
「もうすぐ春休みだなぁ」

「だねっ。ていうかもう一月も半ばって時間経つのは早いよねっ」

「まったくだ。冬休みボケが治らないままに春休みになってしまうぜ」

「風紀委員の早坂小雪としてはけしからん! って言いたいけど、ちょっぴり同感だっ」

「せめて春休みは有意義に過ごしたいよ。」

「ぶ、文芸部で合宿する予定あるんだけどっ。便乗して参加してみるっ?」

「泊まりとかは面倒。日帰りで遊びに行ける場所でも調べるかなー」

「……ふーんだっ」





「おい、見たか今の」

「ダンナは相変わらず凄いよな」

「ああ、見事なスルーだ」

「さすがダンナ。あの枯れっぷりは半端ねぇな。同じ年とはとても思えん」





(……アンタも変な形でクラスで目立ってるわねぇ)

「ん? 俺は地味な方だと思うんだが」

「何か言ったっ?」

「別に」


一月二十八日
「最近運動不足な気がするんだの」

「だからってスクワットなんかして意味あんのか? 先生」

「これはまぁ気分の問題じゃが。また熱い戦いをしてみたいものじゃ。命のやり取りがない程度で」

「先生も大概ヌルいよなぁ……」

「言うな。……ふぅー。木刀のところにでも遊びに行ってみようかのぅ」

「行くのは自由だけどあの木刀は自力じゃ動けないし、雑談くらいしか出来ないんじゃないか」

「あー……そうだの。では一緒に早坂宅に行かんか?」

「また今度な、また今度」

「お主はそう言ってなかなか付き合ってくれぬー」





(日曜日のお父さんとその子供みたいな会話ねぇ……)









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