十一月三日 「暇だのー。ツクモガタリー」 「無意味に化けるなよ、妖刀先生」 「ちょっと映画でも観たい気分だから銭をくれんか? 何か借りてくるでの」 「妖刀が言うことじゃないな……。どういうのが観たいんだ? 時代劇?」 「サウンド・オブ・ミュージックが観たい気分だの、今は」 「……ほぉ」 「天使にラブソングを、でもいいんだがの」 「ミュージカルが好きなのか。博物館生活が長いだけあるなぁ。……あんま関係ない気もするが」 |
十一月七日 「また遅刻が多くなってきたねキミはっ。けしからんことだよっ」 「布団が離してくれないんだよ。そんなことよりさ、早坂小雪」 「何かなっ」 「寒くないの? その短いスカートで。今日とかかなり冷えると思うんだが」 「寒いよっ。寒いに決まってるじゃないかっ」 「はぁ……」 「でもアレだねっ。この早坂小雪の最大の魅力であるこの脚線美っ」 「……」 「ぎりぎりまで披露しておかないと勿体無いじゃないかっ」 「ああ……そう」 「……突っ込んでよっ。冗談だよっ。ちょっと委員長っぽいこと言ってみただけっ」 「先行くぞー」 「……ううっ。慣れないことは言うもんじゃないねっ」 |
十一月九日 「また遅刻だねっ」 「もういいから通してくれよ……。寒いんだよ……」 「この風紀委員の早坂小雪っ! の方が寒いっ!」 「じゃあ大人しくジャージでも穿いてろよ」 「何をナマイキなっ。この早坂小雪の愛刀を久々に振るう日が来たようだねっ」 (我が主の命が下れば、すぐにでも貴様を成敗してくれるわ) 「相変わらず木刀なんか持ち歩いて好戦的な……」 (妖怪退治は血沸き肉踊る、な) 「妖怪言うな」 「言ってないよっ」 (ふん。黙って我に殴り倒されるがいい) 「……もう妖刀先生呼んじゃおっかなぁ。こいつら蹴散らしてやりたい……」 |
十一月十日 「何じゃ、そのコブは。えらく大きく膨らんどるの」 「また妖刀先生は無意味に化けて……。今朝、早坂小雪にやられたんだ。木刀でガツンと」 「ほぉ」 「早坂小雪よりもあの木刀が厄介だよ……」 「そいつはけしからんのぉ……。ワシの大事な相棒に手を出すとは許しがたい」 「嬉しそうな顔で何を言ってんだ。その場には呼ばないからな」 「……えー」 「えー、じゃないって。朝っぱらから校門前で日本刀なんか振り回したら……」 「実に楽しそうだの」 「退学なるっつーの」 「かーっ! つまらん! つまらんのー!」 「静かにしてくれよー」 「あーあ。刺激が欲しいのぅ」 |