十月五日
「秋眠暁を覚えず……」

「響きは似てるけどそんな言葉はないわよ。……って。寝ちゃった」

「何でわざわざ部室で寝るんだっ?」

「もう放課後なんだから家で寝ればいいのにねぇ」

「……」

「ガチで寝てるねっ」

「どうしましょう、小雪ちゃん」

「何かなっ」

「私、イタズラしたくなってきちゃったわ」

「いいねっ! 部室で眠るヤツの方が悪いんだよっ」

「よねー」

「じゃあとりあえず顔に落書き……っ」

「とりあえずズボンを脱がしましょうか」

「そ、そっちのイタズラはマズいよ委員長っ!」


十月十一日
「読書の秋……ということで文芸部的には創作をがんばりたいと思うわ」

「まったくもって賛成だねっ」

「うわー。最近の少女漫画はすげぇな。いいのか、こんなの小学生とかに読ませて」

「とりあえずみんなでどんどんお話を書き溜めていきましょう」

「部長がお題だけ用意してくれたから、これに沿ってかけばやりやすいかもねっ」

「単行本に書き下ろしでベットシーンを追加だとぅ。PTAもよく文句つけないなぁ」

「お題は……家族、か。案外普通ね」

「部長は派手なだけで普通な人だからっ」

「もう『り○ん』とか『花○夢』とか『なか○し』が卑猥な単語に聞こえてきそうだぜ」

「さっきからうるさいよっ、そこっ」

「そうよ。男女で絡んでるうちはまだまだ温いわよ」

「委員長っ、ツッコミどころが違うよっ」

十月十三日
「もうすっかり秋だねっ」

「だなぁ。そろそろ肌寒かったり……お?」



(ぎゃああああああああ……)

(いっそ一気に焼いてくれぇぇ……)



「早坂小雪、ちょっと寄ってこうぜ」

「えっ。どこにっ?」



いーしやーきいもー……。お芋、お芋、お芋だよー……。



「ああっ。焼き芋かっ。いいねっ」

「だろ? そう遠くないみたいだから追いかけよう」

「おーっ。……でも耳いいねっ。この早坂小雪っ。気づくのがワンテンポ遅かったっ」



(ひぃぃぃぃ……)

(せめて誰かオレを食って楽にしてくれぇぇ……)

(お前らうるさいなー。何で熱さなんか感じてんだよ)

(イキがいいんだろ?)



「美味い焼き芋を選ぶコツは、悲鳴を上げてるヤツをチョイスすることなんだぞ。知ってたか?」

「言ってる意味がまるでわからないよっ」


十月三十一日
「最近冷えるようになってきたなぁ。……へっくし!」



ぼき!



「……あ」

(ああああああ!?)

「スマン、タオル掛け。うっかりへし折ってしまった……」

(何で私を握りながらクシャミするんですか!? 何でそれで勢い余って折っちゃうんですか!?)

「いやー……」

(ヒドイですぅぅぅー!)

「あとでボンドでくっ付けるから……」









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