六月四日 (もう嫌だ。もうボクは何も傷つけたくないんだ……) 「……そうか」 (何かを傷つけてまで得るものに価値なんかないはずっ) 「……まぁそうかもしれないが、俺はオカズがもう一品欲しいからお前を使うぞ。缶切」 (何も傷つけたくないのにぃぃ) |
六月四日 (うー。電波をゆんゆん感じるなぁ) 「今日も頑張ってるなぁ、アンテナ」 (お、ダンナ。今ニュース番組を受信したんだけど、内容聞く?) 「どうせならテレビからその情報を得るから別にいいよ」 (くー。もどかしいなぁ。俺だって同じ内容の情報知ってるのになぁ) |
六月九日 (旦那はさ。私みたいな腕時計は使わない派?) 「ん? まぁケータイさんがいれば時間はわかるからな。悪いが必要ないかも」 (お父さんみたいに大人になったらいるかもよ?) 「そうだな」 (……どうでもいいけど、お父さんは何も能力ないのね) 「母さんもないぞ。おかげで何も知らない小さな頃は迷惑かけたなぁ」 (へー。何となく想像できないけど何しちゃったの?) 「色々あった上で、精神科の先生と神主さんと神父さんとその他を半殺しにしてしまったことが……」 (どういう色々があったらそんなことに……?) 「いやぁ……あの頃は若かった」 |
六月九日 「スーパーの裏手ってダンボールよく積んであるよな。今度部屋の片付けする時はここから貰っていこう」 (お。ツクモガタリだ!) (すっげー! 珍しー!) 「……」 (ああ、無視して行こうとしてる!) (が、がんばって気をひいてみようぜ!) 「……」 (えーとえーと。……合体とかどうだ!?) (それだっ! 変形、合体!!) 「……? お、おお?」 ((ダンボォォール・ロボ! ……っぽい感じ!)) 「意味もなく巨大化するな! 3メートルくらいないか? お前ら」 ((ふふふ。驚いてる驚いてる)) 「だいたい俺の気をひいて何がしたかったんだよ……」 ((……)) 「……」 ((がおー!!)) 「だから意味もなく襲ってくるなぁぁ!!」 |
六月九日 「さーて昼飯でも作るか……」 (あ、ダンナ。火なら自分が点けますよ) 「悪いなコンロくん」 (カチッと。……あれ?) 「不発だな。一回戻して点けなおさないと」 (いやぁお恥ずかしいです。コンロそのものな自分がうまく火を起こせないなんて) 「照れなくてもいいからガスを一回止めろ」 (もっとダンナのお役に立てるように精進しますよ。自分は!) 「気持ちはわかったからガスを止めろ……!」 (あ、そうそう火を起こすんでした。えっと一回戻してカチっと……) 「す、ストップストップ! この家を爆破する気か!」 |
六月九日 (トイレットペーパーな私ですが、たまにはアグレッシブな使われ方をしてみたい) 「どういうことだよ……」 (悪人退治に活用するとか) 「トイレットペーパーで戦わなきゃならんのか俺は」 (変身アイテムっぽく使用するとか) 「ミイラ男になるだけじゃないか」 (……もー。ダンナつまんなーい) 「つーか頼むから用を足すときくらい静かにさせてくれ……」 |
六月十四日 「……で、ここはこうしてこうなるからこうこうでー」 (この教師の説明は解り難くて敵わんな。ここは熟練の教卓たる私がサポートをば) 「ここがこうなってここここでー」 (つまりアレがああしてああなるわけだ) 「ここはこうなるがゆえにこうなるんだな」 (要するにアレはコレである、ということだ。……ふ。まぁダンナにしか聞こえてないわけだが) 「……ぐぅ」 (寝てるのか! 本気で意味がないではないか!) |
六月十四日 「……よし。これで、完成」 (いくら安売りしてたからって良く戦艦のプラモデルとか作る気になったわねぇ) 「おいおい。シャーペンよ。その言い方はプラモデルに失礼だろ? ずっと大人しくしてくれてたってのに」 (そ、そうね。……ごめんなさい) (ああ気にしないで。……と言いつつ最後の最後で裏切ってみるオレッ!) (ああ!? せっかく完成したのにバラバラに分解した!) 「……っ!」 (ああ!? 無言でプラモデルを叩き潰した!?) 「……!」 (お、怒るわよねぇ。何時間もかかってたし。でも、そこまで木端微塵にしなくても。……ああ) |
六月十四日 「近所の子供がしゃぼんだま何か飛ばして……微笑ましいなぁ」 (弾けて消えるわけにはいかん! いかんぞぉ!) (そのとおりだ兄者! 我らは天高く舞い続けて、いつしか雲さえも越えてみせるのだ!) 「……あっつくるしいヤツら」 (少しでもツクモガタリの周りを飛び回って力を蓄えるのだ! 弟よ!) (わかったぞ兄者!) 「……」 (うおおお!) (おりゃあ!) 「……ぱちん、とな」 (あ、兄者ぁぁ!?) |