五月二十八日
「お、危ないな。画鋲が落ちてた」

(そうなのです。拾って下さると有難いのですが)

「はいはい」

(ありがとうございます。ついでに私をあるべき場所に運んで下さると助かるのですが)

「メッセージボードにでも刺しておいてやろう」

(いえ。そこよりも)

「ん?」

(女子の上履きの中、などが個人的にベストなのですが)

「人に何やらせる気だ、お前は。ていうかわざわざ日曜に学校に行きたくないぞ」





五月二十八日
「お。何だか久々なモノを発見」

(どぉも! 物置の奥でホコリ被ってたカセットテープでぃす!)

「元気いっぱいだな」

(はぁい! 元気くらい良くないとやってられませぇん!)

「そうかそうか。じゃあ景気付けに録音されてる中身でも聞いてみるか」

(おぅ! いいですねぇ!)

「……セット、再生っと」

(さぁあ! ご清聴願いまぁす!)

「お前がうるさいよ。……何だこりゃ」

(聞いての通り、落語でございまぁす!)

「興味ない……いや……うん……ちょっと面白いな」

(ご理解して頂けて幸いでぇす!)





五月二十八日
「ヒマなので日曜大工でもしようと思う」

(というわけで。鉋のオイラの出番だな)

「うん。じゃあこの辺ちょっと削って」

(ホイきた任せろっ)

「そこのノコギリはここ切って。ヤスリはそこを……」





「よし。立派な本棚が出来ましたっと。三十分もかからなかったな」

(ふう。いい仕事したぜ)

「お疲れお疲れ」

(……いやちょっと待てダンナ。日曜大工なんだから自分で作ろうぜ!? 作ったのオイラたちじゃん!)

「お疲れお疲れ」

(く、くう。何となく悔しいっ)





五月二十八日
(あー)

(ツクモガタリさんだー)

(お願いしますーちょっと近寄ってもらえません?)

「街路樹たちが何の用だよ」

(いやー)

(ダンナのお力を借りて)

(皆の枝の伸び具合なんかを揃えてみようかと)

「そんなことしたら寿命縮むんじゃないのか」

(まー)

(どうせ伸びすぎたら取り替えられちゃうんだし)

(それまで好きにやろうかなぁ、と)

「サバサバしてるなぁ」





五月二十八日
(なぁダンナよ。12時ジャストに合わせ鏡したら悪魔が来るらしいぜ。試してみようや)

「それより前に、鏡」

(んあ?)

「喋るときに、映ってる俺の顔を使って喋るのはやめろ。不気味だ」

(いーじゃねーかよー。別によー)

「……まぁそれはそれとして、本当に悪魔が出ても困るからやらないぞ」

(あー……。妖刀とかマジにいるもんな。確かにヤバいわ)



五月三十日
「今日はいい天気だから洗濯物がよく乾きそうだ」

(でもねー。洗濯ばさみーズとしてはヒマなひとときでもあるんだよね)

(そうそう)

(私はそんなこともないけど……)

「でもこれがお前らの仕事だからな。がんばってもらわないと」

(……いや!)

(たまには逆らってみるぜ!)

(やめなよー……)

「うおっ。なぜ襲い掛かってくるお前らっ」

(つまみ倒してくれるわー!)

(レッツ下克上!)

(危ないよー……)





「……やれやれ。反省したか?」

(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

(まさか俺たち相手に妖刀先生使うとは思いませんでしたッス。正直甘くみてたッス)

(だから危ないって言ったのに……)



(……召還されるのは歓迎なんだが、洗濯ばさみ相手に峰打ちは手加減かなり難しかったのぉ)





五月三十日
「……む。ゴキブリか。居着くのはともかく、家族の目に触れないように気をつけろよ」

(さすがダンナ。懐が深い。でもアッシは伝言に来ただけでさぁ)

「伝言とな」

(へい。ヒメさまからで)

「ほぉ」

(私はお小遣いが少なくて遊びに行けないので、たまにはこっちに来て下さい……とのことで)

「そういや今年のゴールデンウィークは田舎行かなかったなぁ」

(寂しがってらっしゃるんで、たまには顔見せてやってくだせぇ)

「しかし用があるなら電話使えばいいのに。お前も大変だな」

(ヒメさまは超能力者ゴッコが好きですからねぇ。地元でもぶいぶいやってますぜ)

「……あまり派手に動くな、と伝えておいてくれ」












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