四月十一日
「なーんかシャーペン使うのすっごい久しぶりな気がする」

(アンタは休み中は文字すら書かなかったからね。まったく不勉強なんだから……)

「まぁそう言うなよ。でも久々にお前使うと凄い使いやすいなぁ」

(い、いきなり何を言い出すのよ)

「やっぱり長年使ってるだけあるぜ。シャーペンの中じゃお前が一番だな」

(……ふーんだ。そんなに褒めたって何も出ないんだからね)

「お前が出せるのは芯だけだろうが。……ん? 気のせいか字が綺麗になってきたような……」

(ふふっ。気のせいでしょ気のせい)


四月十三日
(てめぇ、このヤロー……!)

(因縁つけてきやがって。オレらに何の怨みがあるってんだよ)

(こ、これが私のお仕事だから仕方ないんですよぅ……)

「これこれ。車が車をいじめるでないよ」

(だってよぉ……。こいつヒドイんだぜ?)

(お仕事なんですってぇ……)

「何の話だよ。それにしても……何で駐車場でもない、こんな半端なところに車が大量に停まってるんだ」

(春の)

(交通安全週間)

(だよ! チクショウ! 警察の犬め! 何で普段はスルーしてるこんなトコでネズミ捕りしてんだよ!)

(えーん。仕事なのにー)

「よく見たら罵倒されてるのパトカーか。……まぁ迂闊だった、としか言いようがないんじゃないか」




四月十六日
「芯が切れたので入れ替えっと」

(わかってるわよね? 一度に入れすぎるんじゃないわよ)

「わかってるわかってる。……よし、かちかちかちっと」

(そうそう丁寧に)

(こうやってシャーペンのお嬢のペン先から出てきてると、まるでお嬢から産まれたような気分に)

「いきなり何を言い出すんだ、芯」

(意味わかんないわよ)

(というわけでお嬢がボクの母のようなものとして、ダンナは父みたいなもの?)

「はぁ、そうかい」

(……)

(というわけで、擦り切れてボクが消えるまでダンナはパパ、お嬢はママと呼ばせてもらうねー)

「まぁ好きにすればいいけど」

(……そ、そうね。呼び方くらい好きにすればいいわよ)


四月十八日
(ダ、ダメなのにゃダメなのにゃ。ウチはネコマタ訓練のためにもっと理性的に生きると決めたのにゃ)

(そんなこと言ったってもうフラフラじゃないか)

(にゃ、にゃあああ……。ダメなのにゃああ……)

(身体は正直なもんだな。ほら、俺が欲しいんだろ?)

(そ、そんなことないのにゃ。やめて欲しいのにゃあああ……)

(ふふふ……)



「またたびー。あんまりイジメてやるなよー」


四月十八日
「委員長大丈夫か?」

「うん……ありがとう……」

「なかなか調子良くならないよなぁ。一回少し学校休んでゆっくりした方がいいんじゃないか」

「その方がいいかも……。ちょっと頑張りすぎちゃった」

「ベットは空いてるな。保健室の先生から体温計借りてくるからとりあえず熱測ろうぜ」

「うん……。じゃあ私横になってるね」





(ワシを使うんか?)

「使うとも。何か文句あるのか体温計」

(別に構わんがな? どういう風に使うんかだけ気になるのぅ)

「どうって。普通に脇の下に挟んで使うつもりだぞ」

(ほうか。それなら問題ないの)

「何なんだよ」

(いや。尻の穴に突っ込んで測るやり方があると聞いてのぅ)

「あー。聞いたことあるぞ。ヨーロッパの北の方じゃそっちのがポピュラーとか何とか」

(日本生まれのワシには馴染まんがの。尻の穴に突っ込まれるのは勘弁だの)

「それはそうだろうなー」





「委員長ー。持ってきたぞ」

「ありがと……。じゃあ早速……」

「ちょっと待てちょっと待て。何故スカートを脱ごうとする」

「……熱測るから」

「委員長の家庭ではヨーロッパ式なのかよ。この南蛮気触れめ!」

「とにかく脱ぐー……」

「こらこら。せめて俺の前では脱ぐなー」

「南蛮は差別用語ー……」

「言葉狩りには反対だ……っていうか熱にやられたか委員長!」


四月二十日
(拘るのもアリだとは思うが、年中アロハってもの考えモノだと思うワケ)

「うーん……」

(ちょっとアロハ以外の服にも挑戦してみればいいのに)

「そもそも興味が沸かないんだが」

(最初からアロハ以外はいらないとか思ってるからだよ。色々見てみないと)

「まぁ考えてみる……」



「どうしたのっ。マネキンの前で固まっちゃってさっ。その服気に入ったのかなっ?」

「いやぁ、興味を持つ努力してみようかと考えてたのさ」









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