二月二十五日
ちょっと耳が痒かったので、耳掃除をしよう。

そう思って、先ほどから耳掻きを耳に突っ込んでいるのだが、なかなか耳カスがとれない。

でもまぁ、こうやって耳の穴の中をかりかりやっているだけでも、そこそこ気持ちがいい。

のんびりと耳を掻いていると、当の耳掻きから苦情が来た。

(じれったいッスよ、旦那。オレっちが掃除してやるッス)

「んー。そりゃ悪かったな。じゃあ頼んでいいか?」

俺自身に不満がなくても、耳掻きそのものが不満に思っているのは問題だ。

耳掻きと、俺の耳の衛生のためにも手っ取り早く任せることにした。

(お任せあれッス。では失礼をば……)

俺が耳掻きから手を離すと、耳掻きは自分で掃除を始める。

「おー……。いい感じいい感じ」

さすが耳掻きだけあってうまい。隅から隅まで丁寧に。

……ってちょっと痛くなってきた。

「もう少し弱くで頼む」

(いや、まだッス)

断固とした口調で断られてしまった。

「……へ?」

何やらテンションの上がってきたらしい耳掻きはぐりぐりと回転を始める。

「いたっ!? 痛いぞ!?」

(まだ! まだ生ぬるいッスよ!? もっともっと奥までぇぇ!)

「や、やめろぉぉぉ!?」


二月二十八日
今日の科学の授業は実習。

ということなので、勝手にアルコールランプ使って炎色反応を楽しんでいる俺。

銅を燃やすと青緑ー……。

ぶあさぁっ。

カルシウムあぶって橙赤色ー……。

ぶわさぁっ。

ヒ素を焦がして淡青色ー……なんだけどさすがにヒ素は好きに触らせてくれんか。ちぇ。

ぶあさぁっ。

「もう。そろそろ実験手伝ってくれない? それに勝手に色々燃やしちゃ駄目よ?」

ぶあさぁっ。

「わかったよ、委員長。でも俺も一つ聞きたいんだが」

ぶあさぁっ。

「何?」

ぶあさぁっ。

「……なんでそんなに白衣をはためかせてんだ? あと実験中だから前閉じたほうがいいと思うし」

ぶあさぁっ……と白衣をはためかせる手を止めて、委員長は顔を赤らめる。

「わ、私ったら……。い、いやね。何かこう白衣着ると科学者気分にひたっちゃうって言うか……」

「まぁそれは好きにしたらいいと思うけど、白衣がそろそろ気の毒で」

(旦那ぁ。俺ぁもう吐きそうだぁ)

振り回されすぎて気分を悪くしたらしい白衣が情けない声を出す。……お前が何を吐くってんだい。








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