二月十七日
「昨日賽銭ドロが何故か血まみれで倒れたってニュース見て来たんだけど」

(……)

(……)

「狛犬さま? ……お口に血糊がついてますよ」

(はっはっは。バレたか)

(いやぁ。まぁわしら番犬じゃし? 悪人にゃあ制裁をってな)

((がははは))

「何というか……ほどほどにお願いしますね……」


二月十八日
「ったく何で俺が早坂小雪の風紀委員の仕事を手伝わなくちゃならんのだ」

「ぶつぶつ言わないでさっさとそのプリントコピーしちゃってっ」

「はいはい……。ぴっぽっぱっと」




(こんにちはー)

(はじめましてー)

(よろしくー)

(やはー)

(お初ー)



「……コピーされてくるプリント一枚一枚に挨拶されてたらキリないからやめてくれ」



(いよっ)

(こんちゃー)

(ちわっすー)

(ちょあっす)

(へーい)




「うっとおしー!」

「ひわっ!? そ、そんな面倒がらなくていいじゃないかっ」

二月二十日
「おっと。お茶をこぼしてしまった」

「まったくドジだなっ。ティッシュあげるからコレで拭きなっ」

「ズボンも濡れちゃったね。……じっとしてて? 今拭くから」

「い、いやズボンは自分で拭く」




(あーあ。ティッシュ配りのお姉さんの手から世に渡り、小雪ちゃんの口を拭ったり、委員長さんのお手拭代わりに使われたり)

「……」

(優雅にすごしてたのに最後は野郎の股間部を拭くのに使われるのかぁ。やれやれだぜぇ)

「……うるさいな。文句あるなら便所に流すぞ」

(けっ。好きにしやがれ)




「遠慮しないで。拭いてあげるから!」

「遠慮してねぇって!」

二月二十二日
(あ、流れ星よ。お願い事しなきゃ)

「シャーペンの願い事って何だ?」

(べ、別に何でもいいじゃない)

「何慌ててんだよ」




(――言っとくけどオレに願い事したって意味ないからなー!)


(あーあ。行っちゃった)

「……今、遠くから何かの叫びが聞こえたような」

二月二十三日
(泣き、悶え苦しむがよい! 人間どもめ!)

「くっ……! 今年も奴らがとうとう……」

(我らから逃げることも出来ずに無力に弱り果ててしまえ!)

「ああ……。俺もさすがに花粉たちの侵攻を抑えることはできない」

(ふははははっ)

「みんな……耐えてくれ」


二月二十四日
(見てっ! 私を見てっ。見てっ!)

「……何かと思えば宣伝用の看板か」

(もっとっ! もっとよっ! ……ああ! そう、もっと見つめてっ!)

「うわぁ……」

(感じる……視線を感じるわぁ……。でもまだよ! 物足りないわ、もっと私を見てぇぇぇ)

「な、何かやだなぁコイツ」









BACKTOPNEXT