九月七日

(おいおい止めとこうぜ。俺たちゃトモダチだろ?)

「だな。ボールはトモダチだな」

(トモダチを蹴り飛ばすのはよくないと思うな、俺は)

「サッカーボールに生まれた我が身を呪うがいいぜ。蹴られてナンボの商売だろーが」

(チッ、だからって大人しくしてると思うなよっ!)

「大人しくしててくれよ!」



「この風紀委員の早坂小雪! 毎回見てて思うけど、彼ってドリブル凄い早いなっ」

「私も毎回思うけど、どうしてもボールが蹴られてないのに転がってるように見えるの……」


九月九日

「花瓶の水の入れ替えメンドクサー」

(おほほ。もっと丁寧にやりなさい? というかこのガーベラさんのお手入れを出来ることを光栄に思いなさい?)

「偉そうだな」

(このガーベラさんの花言葉は、神秘・崇高美。色によっては究極美! ならばまず態度から崇高な感じにするべきじゃない?)

「崇高なのと偉そうなのは違うと思うぞ」

(おほほ。だからと言って神秘っぽく無口になられても困るんじゃない?)

「まぁな。色々と困るな。会話文だけなのに無口になられると」

(おほほ。そうでしょう?)

「……なぁ崇高にして究極なる神秘のガーベラさん」

(何かしら?)

「何だかアブラムシ君たちがびっしり付いてますわよ」

(とってとって!!)

「えー。彼らには彼らの生活があるからなぁ」

(とってぇぇー!!)


九月十日

(にゃあにゃあ。もっとお話して欲しいのにゃ)

「せっかくの休みだってのに……」

(構って欲しいのにゃー)

「なぁ、俺の可愛い子猫ちゃんよ」

(そういう言い方は照れるのにゃー)

「何で俺にそんな構いたがるんだ? いくら俺が喋れるからって」

(ネコマタになるための修行なのにゃ)

「ネコマタ……猫又とな?」

(そうにゃ。今のうちから人間と喋り慣れておきたいのにゃー)

「あれ何十年も長生きしなきゃなれんぞ」

(頑張るにゃー)

「いや、無理じゃね?」

(成せばなるのにゃ?)

「疑問系かよ。てか猫又って人喰いじゃんよ」

(それは止めとくにゃー。人間に化けられるようになりたいだけなのにゃ)

「人間なんかに化けてどうすんだよ」

(ダンナと一緒にユーエンチとかエイガカンとかに行きたいのにゃ)

「か、可愛いヤツめ……!」

(もっと優しくダッコして欲しいのにゃあにゃあ)


九月十二日

「雨か……。ちょっと雨に頼んで避けてもらうかな」

(また旦那はそんなこと言って……)

「何すねてんだよ、傘」

(旦那がそんなことばっかりやってるからボクは学校に置かれっぱなし……)

「むぅ」

(たまには使って貰えないとボクのアイデンティティーが……。よよよ)

「わかったわかった。使ってやるから」

(あ、ありがとうございますっ)

「何ならあそこで傘忘れて途方にくれてる風紀委員の早坂小雪でも誘ってみるか?」

(相合傘ですか! 傘、冥利に尽きるってもんですよ!)



「この風紀委員の早坂小雪! たまには雨もいいものだと思うの! 農家さんも喜んでるはず! 他にも……!」

(うひゃー! 久々の雨だー! 冷たいー! 気持ちいいー!)

「少しは静かにしろよ」

「……ごめんなさい。はしゃぎすぎたです……」

「いや。風紀委員の早坂小雪に言ったわけでは」


九月十四日

(その先の部屋でねー)

「静かにしてなさい」

(あ、そこでその女がー)

「黙れって」

(……犯人はー)

「ええい、推理小説のくせにネタバレしようとするんじゃない!」









BACKTOPNEXT