二月十五日 (疼く。疼くぜぇぇ……! エモノが欲しくて疼くんだよぉぉ……!) 「知らないよ」 (ったく何でお前は鉛筆を使わないんだよぉぉ……! 鉛筆削りのオレの仕事がねぇじゃないかよぉぉ) 「お前がそういう性格だから使ってないんだよ」 (ちくしょぉぉ……! オレに、オレに鉛筆を削らせろぉぉぉ……!) (……アタシ、シャーペンに生まれてよかったわぁ) |
二月十五日 「今日は疲れた……」 「布団は離してくれないし、校門で早坂小雪に捕まるし、シャーペンとケンカしたせいで板書できなかったし」 「昼飯のパンには逃げられるし、委員長が書いた俺をモデルにした官能小説の新作見つけちゃったし」 「……参ったぜぃ」 |
二月十五日 「……うっわーっ!」 「なんで……?」 「ふふふん」 「ババ抜きもポーカーも人生ゲームもウノも麻雀もドンジャラもモノポリーもっ!」 「何で勝負しても勝てない……」 「まぁ。人徳の差ってヤツかね?」 「人徳とゲームに何の関係があるんだよっ! くやしーっ」 「一勝も出来ないなんて」 「ただの遊びならともかく賭け事となると話は別だ」 「くーっ。この早坂小雪のお小遣いがっ」 「私ももうスッカラカンだわ」 「……まぁ友達同士で賭け事ってのはアレなんでこの金は返すけどな」 「ホントにっ!? ……い、いやっ。情けは無用っ!」 「その通り……その通りよ。最後に一発逆転の勝負を挑むわ」 「お前ら……。ていうか委員長、金もないのに何賭けるってんだ」 「それはそうだねっ。どうするのっ?」 「……次の勝負で負けたら……脱ぎます!」 「……さ、この辺でお開きにしますか」 「そ、そだねっ。賭け事はよくないねっ」 「急に冷めないでよ二人共ー。冗談だってばぁ」 |
二月十五日 「相変わらず客いないのな。この映画館」 (そうなんだ。まぁ古い映画館だし、たまにこうして旦那が来てくれればそれでいいさ) 「そうだとしても俺しか客しないってのは淋しいよなぁ」 (うーん……) 「……それはそれとして、もよおしてきた。ちとトイレに」 (あ、じゃあココで一旦停めとく) 「え? ああ、ありがと」 「あれ? これってさっきの伏線か? むぅ。難解な映画だ。わからなくなってきた」 (じゃあ気になるトコロまで一回巻き戻して確認してみる?) 「……お前さぁ。尽くしてくれるのは嬉しいけど、ほぼビデオと化してるぜ?」 (……はっ!?) |
二月十五日 「あ、見てよ。あんなところに変わった乗り物が」 「変わった乗り物って何だ委員長。……ああ、モペットか」 「モペットって?」 (説明しよう! モペットとは、自転車とバイクが奇跡の合体を果たした美しい乗り物である! 見た目は自転車にエンジンが付いてる感じ! 普段は原付、エンジンを切れば自転車としても 使えるクールかつスタイリッシュなシロモノ! ちょっとお年を召した一部地域の方なら ラッタッタと呼ぶ方もいるかもしれない! 実際の乗り心地の感想としては、原付にしては馬力が 弱く、自転車にしてはペダルが重すぎる。要するにどっちつかず感が漂う……ってウルサイわぁ!) 「……自転車と原付の合いの子。マニア好みの一品かな。またはオシャレさん向け?」 「へー」 (ちょっと待て! もっと語らせろ!) |
二月十五日 「もぎゅもぎゅもぎゅ。あっ、キミかっ。やほっ」 「……やほ」 「もぎゅもぎゅ。こんなトコロで奇遇だねっ。もぎゅ」 「ああ、そうだな……」 「もぎゅもぎゅもぎゅぎゅ。ヒマなら一緒にブラつかないっ? ……あ、ガムあるけど食べるっ?」 「いや、いらない。ガムは苦手なんだよ……」 「ふーんっ。もぎゅもぎゅ」 (ぎゃあああああああ……) (楽に、楽にしてくれぇぇぇ) (せめて食うなら食ってくれぇぇぇ) (噛まれるだけ噛まれて捨てられるなんてイヤだぁぁぁ) 「……うう、悲鳴が聞こえる」 「顔色悪いけど大丈夫っ? もーぎゅ」 |
二月十五日 (俺は消しカス。いわゆるゴミだが……) 「うん。捨てるぞ」 (待て待て待て。俺のようなゴミだって底力を出せばもう一花咲かせられるはず!) 「……あーそう」 (くっそうメンド臭そうな顔しやがって! 見てろよ。ふぉぉぉ!) 「おお。消しカスが集結して練り消し的なものに」 (どーよ! どーよ!?) 「でも練り消し的なものになられても……。授業中こねて遊ぶくらいしか役に立たんがな」 (じゃあ遊べよ!) 「な、何だよ強気だなぁ」 |
二月十五日 (私、お守りとして生まれたからには、主殿をきちんを守ってみせようと思うのです) 「ほぉ。嬉しいこと言ってくれるじゃん」 (ふふ。当然のことです) 「でも、お前って無病息災のお守りだよな。守るってどんな感じ? 精神的な意味で?」 (主殿が何らかの原因で心停止した場合、心臓マッサージを試みようと思っています) 「えらく具体的かつ、シチュエーションが限定された話ですな」 |