二月一日
「あーあ。学校が始まってるのに気付かないとは何事かって色んな先生に怒られちゃったわ」

(元気だしてよヒメちゃん)

(そうそう)

「うう、ゴキブリに慰められる私……。こういう気分の時はミっちゃんと勝負ね」

(ツクモガタリの旦那はもう帰ってしまったのでは?)

「ふふん。ミっちゃんってば急いで帰ったから着がえとかまだウチにあるのよね」

(それでどうするんですかい?)

「送るように頼まれてるから、荷物詰めてるダンボールにトラップを仕掛けーる!」

(トラップ?)

「荷物開けたら大量のゴキちゃんズが入っててビックリ! ……ってことでみんな協力お願いね」

(ヒメの頼みなら何なりと)

(任せてくれーい)

(OKだぜヒメちゃん!)

「みんなサンキューッ。もちろんご飯も入れるから心配しないでね」

(空気穴も頼むな)

「さて。これが例のダンボールね。……ぷわ!?」

(ぎゃああ!?)

(うひゃー!)

「あ、開けたら虫よけスプレーが噴射するトラップ!? しかも霧状じゃなくて原液噴射……!」

(さすがの俺らでもちと効いたぞ……)

(バルサンじゃなかっただけマシか)

「お、おのれツクモガタリィィ」

(ヒメ、ちょっと嬉しそうだな)

二月三日
「あーっもうっ。出来ないっ」

「何やってんだ、早坂小雪」

「あっ、キミかっ。部室に前から転がってたルービックキューブをやってみてるんだけどねっ」

「できないんだな」

「その通りっ。ちょっとやってみてよっ」

「どれどれ……」



(きゅっぴーん! ちゃーんす!)



「おおっ! すごいっ! 受け取った瞬間に完成させたっ」

「お、おお……?」

(何年も何年も誰にも完成されないで放置されてさぁ。ようやく真の姿に。くー! すっきり!)

「……気持ちはわかるが、俺もびっくりしたじゃないか」

「キミすごいってっ! テレビでれるよその芸っ!」

「あー……。ありがとうありがとう」


二月四日
「えっと。次は暴れる、を調べてくれ」

(はいはい。ぱらぱらぱらーっ……ハイ、ここね)

「ん、さんきゅ。しかし悪いな英和辞典。調べるの手伝ってもらって」

(いいのいいの。学校じゃムリだから家でくらいは協力するわよ)




(……なーんて。まぁ電子辞書買われて本棚の奥で忘れられたくないだけだけどね)

(わかるわかる。私も今更エンピツなんて使われたら堪らないモノ)

(シャーペン、あなたもわかる? まったく道具は大変よねぇ)




「何か言ったか、お前ら?」

((別にぃ))


二月八日
(ボクたちを甘くみてはいけない!)
(いけない!)
「はぁ」
(なんとピッタリ1グラム! ピッタリだよ?)
(ピッタリ!)
「うん」
(そして水に浮く!)
(浮く!)
「おう」
(素材はアルミニウムが100パーセント!)
(パーセント!)
「そうだな」
(以上の点からみても、ボクたち一円玉は他の硬貨に何ら劣るところはないのである!)
(ある!)
「別に劣るとか言ってないし。ていうかお釣り出す時にきっちり出てきてくれればそれでいいよ」

二月九日
「たまには銭湯に来るのも悪くないなー」

(そうだろうそうだろう)

「あー……ギボヂイイー……」

(存分に寛いでいけ。……む。ちょっとスマン)

「……なんだー?」

(あそこで中学生の集団が覗きをしようとしている。止めてくれ)

「……面倒な。じゃあ俺は狙いつけるの担当な」

(すまん。頼む)

「ろっくおーん……。ばぁんっとな」



「「ギャー!」」



「なな、なんだ!? お湯がエライ勢いで飛んできたぞ!」

「うわー! 直撃したヤツ気絶してるー!」

「お坊ちゃん方、覗きはよくないぜー……」

「……い、今のはお兄さんが? 何をどうやって?」

「水鉄砲得意なんだよー……」

「「……ありえねー」」


二月十日
(ヒドイ……。私に飽きたからって売り飛ばすなんて)

「うーん」

(私とのことは遊びだったの!?)

「お前マンガだしなぁ。正直遊びのつもりで……」

(よよよ。酷薄なオトコに売られてしまう私……)

「じゃあ古紙収集でトイレットペーパーと交換されるか、売られるかの二択な」

(さぁ。早くお店に行きましょ。新天地が私を待ってるわ)


二月十一日
「物置から泣き声か聞こえると思ったら……花火か」

(めそめそ……そう……自分はしけってしまった花火です……)

「去年の夏に買ったヤツの残りか。あーもう使えそうにないな」

(ああやっぱり……。一花咲かせて散りたかった……)

「仕方ないなぁ。俺が力貸すから派手に散れ」

(……おお! 旦那の近くだと何だか力が湧いてくる!)

「らしいな。俺にはよくわからんが。ちょっと待て。今火を……」

(いやっほーぅ!!)

「おわぁぁぁ!? こ、この野郎。火も無しに自爆するなんて器用な……!」


二月十二日
「ヒマだなー……。あ、そうだ。この間買ったプラモデルでも作るかな」

(じゃっきーん! 高速合体!)

「ああ! 自力で組み上がりやがって!」

(ふふふ。悠長に待ってらんないゼ!)

「お前らプラモデルときたら、目を離したら勝手にジオラマ作るし、ろくでもないなっ」


二月十三日
「どこだ……! どこにいる……!」

(どきどき……)

「隠れてないで出て来い。怒るぞー」

(はらはら……)

「ってそこか!」

(あはは。見つかっちゃった)

「お前がパズルの最後のピースなんだから隠れないでくれよ、まったく」









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