一月二十五日
(ボクは人知れず努力するタイプなんだけどな)

「なんだ。いきなり話し掛けるとびっくりするじゃないかトランクス」

(気付くまで待とうと思ってたけど、もう我慢できない。今日こそ言わせてもらうよ)

「なんだなんだ」

(……ゴム切れてるんだけど)

「おお、ホントだ」

(ずり落ちないようにボクが根性で耐えてたというのにご主人はもう……)

「いやー……悪い悪い」


一月二十五日
「何してんの二人とも」

「なんだキミかっ。見ての通りオマケ付きお菓子を選んでいるのだっ。悩むよねっ」

「欲しいのが当たるかは運頼み……なのは分かってるけど選んじゃうのよね」

「ふーん。何番のオモチャが欲しいんだ?」

「オモチャじゃなくて食玩だよっ。どうでもいいけどっ。……ちなみに早坂小雪としては7番が欲しいっ」

「私は2番が欲しいんだー」

「ふむ。……よし、点呼っ!」

(いーち!)

(にーい!)

(にー!)

(さーん!)

(しー!)

(ごっ!)

(ごー!)

(ろくー!)

(なーな!)

(ななー!)

(はーち!)

(きゅーう!)

「その辺でストップー。結構まんべんなく置いてあるもんだな」

「何ぶつぶつ言ってるのかなっ?」

「んじゃコレとコレ買ってみ。二人とも」

「そんな即決しちゃってもう……」




「あ、狙ってたのが入ってた……!」

「キミっ……もしかしてエスパーっ!?」

「大げさ大げさ」


一月二十六日
「……ふーん。やっぱり塩分の取りすぎはよくないんだなぁ。親父も会社の健康診断ヤバかったらしいし大丈夫だろうか」

(おじ様もいいお年だから心配よねぇ)

「まったくその通りだな、シャーペン。……じゃあちょっと試してみるかな」

(ん? 何を?)

「塩分ー。親父の中の塩―。余分な分だけこっちゃこーい。海に溶かしてやるぞー」

(そんなムチャな)

「さすがに無理か」




(さっきおじ様、やけにざらざらした汗が出たって首を捻ってたわね……)

(海連れてって海ー)

「……まさか風呂場の湯気に乗って本当に塩が部屋に来るとはな」

(アンタ無茶苦茶ねぇ)


一月二十八日
「ぴこぴこぴこ」

(またご主人はゲームばっかして……)

「ゲーム機に言われたくないわい。ん、ここどうするんだろ。ちょっとこの前買った攻略本でも……」

(この根性無し)

「む」

(マニュアル世代! ゆとり教育の弊害の賜物ね!)

「攻略本にそこまで罵られたくないっつーの。あと俺はゆとり教育世代とは微妙に違うし」

(ああ言えばこう言う。まったく最近の若い子は……)

「……生意気なヤツだな。本の端に折り目つけてやる」

(んあ!? な、何するのよぅ)


一月三十日
(ぬるい。ぬるいぜ)

「いや十分熱いだろ」

(馬鹿言え! 湯の温度は四十二℃が最低ラインだ!)

「それはちょっと俺には熱いんだが……」

(それでも日本人かッ)

「そんな怒られても。お前みたいな風呂と違ってこちとら生身なんだっての」








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