十二月十四日 「やー。急に冷えてきたなぁ」 (がくがく) (ぶるぶる) 「まぁでも空気が澄んでるってのは気持ちいいかも」 (いいい、家の中に居られるからそんなこと言えるんだよ) (そそそ、そうだそうだ。この寒風の中、外で干されてる俺らの身になれってんだ) 「しかしだなハンガー諸君に洗濯物諸君。寒いとはいえ天気がいいのに干さない手はないだろう」 (でも寒すぎるぅぅ) (部屋干しで頼む。部屋干しで) 「えー。部屋干しすると、ちと臭うからなぁ」 (脱臭剤買え! 脱臭剤!) (それか部屋干ししても臭わない洗剤とかなかったか!? あったような気がするぞ!) 「知らん知らん。頑張ってお天道様に照らされてくれ」 (じゃあお前からお天道様にもっと暖かくしてくれるように頼んでくれよ) (そうだそうだ!) 「ここからじゃ声届かなくね?」 (成せばなるって!) (ほら、叫べ!) 「……うー、さぶさぶ。冷えてきたからまた今度。コタツ入ってこよっと」 ((ちくしょー!!)) |
十二月十五日 「お前ならまだやれるさ!」 (だめ……ボクはもうダメだよ……) 「弱気になるんじゃない。もう少しで家だ」 (でも……もう……力が……) 「もう少しもたせるんだ、頑張れ!」 (ああー……) 「しっかりしろ、しっかり!」 (……) 「……ダメか。今日は一日助かったよ、カイロくん。……でも出来れば家まで頑張って欲しかった」 |
十二月十九日 「さて。DVDレコーダーを買ってきたわけだが」 (いらいら) 「……配線と設定の仕方がまるでわからねぇ」 (ちっ。とっとと繋げよな? まどろっこしい) 「だって説明書読んでもわからないんだよ」 (説明書読んでも理解できないぃ? はっ! 救えねぇな) 「こ、こいつ口悪いな。じゃあソコまで言うならやり方教えてくれ」 (……ああ?) 「自分のことだから知ってるだろ?」 (……ばっか。それはお前……。も、持ち主はお前なんだからお前がやれよ!) 「お前もわかんないのかよ!」 |
十二月二十日 (まだぁー?) 「まだだよ」 (早くしてよぉ。情けないよぉ) 「大掃除の時にまとめてやるから、な?」 (こんなカッコじゃ恥ずかしいのぉ) 「だから大掃除の時に紙張り替えてやるから! 我慢しろよ障子」 (うぇーん) |
十二月二十三日 「あ、禁煙席で煙草吸ってるオッサンがいる。……注意すべきだろうか」 (俺も煙草として生まれてきた以上、火ぃつけられて吸われることには異存はねェ) 「咥えられてる煙草が何か言ってる……」 (だがな。マナーも守れねェクソ野郎に大人しく吸われてやる義理はねェんだ) 「……」 (食後の一服は最高だろうさ。しかし何で店を出るまで我慢できない? 俺にはそいつが理解できん) 「……」 (テメェは自分の勝手で喫煙してるんだろうが、周りの奴らはどうだ? 関係ねえだろ?) 「……」 (テメェの勝手で人様の健康を害すんじゃねェってんだ) 「……」 (……ま、グダグダ言っちまったがそういうワケだ。テメェのケツはテメェで拭きな) 「……おお。あのオッサン。煙が何故か吐けなくてめちゃめちゃ咳き込んでる。……あ、失神した」 |
十二月二十四日 「あー乾燥する乾燥する」 (……どきどき) 「どこいったかな……。あ、あったあった」 (どきっ) 「冬は乾燥してさすがに塗らないと痛くなってくるぜぃ。ぬりぬりっと」 (……!) 「よし完了」 (……ぽっ) 「……さっきからその反応やめてくれないか?」 (だって恥ずかしいんですもの……) 「なぁリップクリーム。頼むから普通にしててくれよ」 (ふん! デレデレしちゃってバカじゃないの!) 「な、何でリップクリーム相手にデレデレせにゃならんのだ! シャーペン! 聞き捨てならんぞ!」 |
十二月二十七日 「あ、おはよう」 「おはよーっす」 「連休中に何度か電話しても繋がらなかったんだけど……何してたの?」 「んー? ……あ、履歴にあったな。すまんすまん。何か用事だったか委員長?」 「よ、用事ってほどの用事でもなかったからいいの。ところで今年のクリスマスはどう過ごしてた?」 「かなり楽しかったぞ」 「連休と重なったしね。私は文芸部のみんなとパーティーやってたんだ」 「へぇ」 「誘おうかと思ったんだけど電話が通じなくて」 「用事ってそれかぁ」 「そうなの。……で、クリスマスは誰と過ごしてたの?」 「は?」 「い、いや。楽しかったって言うくらいだから誰かと一緒だったんだろうなって気になって」 「両親が留守だったんでな。夜通し騒いでたよ」 「も、もしかして彼女?」 「いや。シャーペンと働き蟻たちとソファーとリモコンとか……まぁ文字通り家中のモノと」 「……えっと。それって何かの例え? あだ名?」 |
十二月二十八日 (寒いにゃあ) 「寒いなぁ」 (こんな日はコタツに限るにゃあ) 「そうだなぁ」 (コタツにミカン。……冬に風物詩にゃあねぇ) 「だなぁ。でも猫は柑橘類食ったらヤバいらしいぞ」 (言ってみただけにゃあ) 「そうかそうか」 (こんな雪の日に外を駆けずり回りたくワンコロの気がしれないにゃあ) 「そうだにゃあ」 (……にゃ?) 「……何か伝染ってしまった」 |
十二月二十九日 「二次会はっ。カッラオケに行くぞっ!」 「「おー!」」 「おー。……あれ、何だか気の進まなさそうな顔してるけど大丈夫?」 「ああ。……今日の店のヤツは健全だといいんだが」 「え?」 「何でもない何でもない」 「らっせら! らっせら!」 (やっぱり若いオンナの吐息はイイねェ) 「らっせら♪ らっせら♪」 (たまらんなァ) 「らっせら☆ らっせら☆」 (ハァハァ) 「RASSERA! RASSERA!」 (イイ……!) 「……マイクには変態しかいないのだろーか」 「そこでぼーっとしてるキミっ! この早坂小雪と一緒に歌うんだっ。かもんっ!」 「お前風紀委員のクセに酔っ払ってんなよ。ていうか何だその歌は。最高だなオイ」 「最近流行の『ねぶた祭りでらっせら☆きっす』って曲だっ。楽しいぞっ」 「よしきた、いくぜ!」 「「らっせら! らっせら!」」 「小雪ちゃんいいなぁ……」 |
十二月三十日 (パソコンでするなんて愛がないよ! やっぱり手書きが一番だよ!) (愛が無いたぁ失敬だな。大事なのは送る、という気・持・ち) (でも手書きじゃないと気持ちは伝わらないよ!) (手書きじゃないと伝わらないような気持ちならどうでもいいじゃないか) (むー!) 「まぁまぁプリンターに筆ペン。喧嘩するでないよ」 (ご主人はどっちがいいと思います!?) (そうそう。旦那の意見も聞きたいなぁ) 「俺? 俺はアレだ。あけおめメール派」 (っ……こんの外道!) (これだから現代っ子は……) 「面倒なんだよー勘弁してくれよー」 |