「確かこれは委員長と始めて会った時のだよな」

「そうね、懐かしいわねぇ。あっこれは小雪ちゃんね」

「それはこの風紀委員の早坂小雪が初めて風紀委員として校門前に立った  記念すべき写真なんだねっ」

この間、俺の部屋で迷子になった働き蟻1129を探していた時 偶然古いアルバムを見つけた。

その事を委員長と早坂小雪に話した所、早坂小雪が見てみたいと言ったのだが、委員長がタダで人のアルバムを
見るのは悪いと言ったので皆でアルバムを持ち寄る事になったのだ。

「これは風景の写真、これも風景の写真、あっこれも風景の写真ね。  ねぇ、何でこんなに風景の写真があるの?」

「ああ、それは3代目が撮った写真だな。風景写真こそが真の写真だって、  勝手に取りまくったんだよ」

「こっちには動物の写真がいっぱいあるんだねっ」

「それは2代目だな、動物の純粋な表情がたまらないらしい」

「3代目とか2代目って、写真家に知り合いでもいるの?」

「ああ、ある意味そうかもな〜 もっともそれ以上にプロ意識持ってるかも知れないけ ど」

(ふふふ、そして4代目である僕は女性の写真にこだわりがあるんだね。
 この後の記念撮影が楽しみだよ、ふふふふふふふふふふふふ)

と、この後三人で写真を撮るために俺が持ってきたカメラが不穏な事を言い始める。

「委員長〜 俺のカメラ調子が悪いみたいだから、この後の記念撮影委員長のカメラ使っ て良いか〜」

「えっ、別に良いけど?」

(なっ何を言ってるんだねご主人、僕は絶好調だよこんな麗しい少女二人を取ることが出 来る時に
 調子が悪くなるはず無いじゃないか!この僕以上に女性を取ることに長けたカメラなん て……)

まだ、俺のカメラが何か言っているようだけど気にしな〜い気にしな〜い

「私ね、貴方の事が好き」

放課後の教室で生まれたその言葉を、俺はすぐに理解することが出来なかった。

「え、ちょっと、冗談だよな委員長」

慌てる俺をみて委員長は小さな微笑を浮かべると、ゆっくりとその両手を 俺の耳に這わせて、
二人の影を一つにしようとその唇を俺の………………

「だぁぁぁぁぁ!わかった、俺が悪かったから!登場人物の名前を俺たちの名前に変えて  朗読するのはやめてくれ〜!!!」

(ふん、大ベストセラーである私を、買った事すら忘れて鞄の中に放置した罰じゃ。

 そうら、次はもう一人の女が告白するシーンじゃ)



「私も、私もずっとキミの事が好きで、大好きで……」

立ち尽くす俺の前で自分の心をぶつけてくる小雪、 いつもの強気な様子とはまったく違い、顔は俯きその肩は小刻みに震えている。

「俺は…………」

何か言わなくちゃならないのは分かっている、でも俺には小雪の真っ直ぐな言葉に 答える言葉が見つからなくって、
ただ無言を紡ぐだけだった。

小雪が顔を上げる、その目には涙が浮かんでいて、その顔は余りにも弱弱しくて、
そしてその瞳はただ真っ直ぐに俺を貫いて答えを待っていた。

俺は……その瞳に答えるためにゆっくりと小雪を抱きしめるとその唇を……



「だからあやまるからやめてくれぇぇぇぇぇ!!!」

(ほーほっほっ、フィクションの話でそんなに真っ赤になって慌てるとは。
 初心よのう…………これはいい玩具を見つけたわ、ほーほっほっ)

(…………そのうちフィクションじゃなくなったりしてね)

机の上でシャーペンが呟いた言葉は、俺の謝罪の言葉に呑まれて消えていった。








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