ニ月七日
「冬は……ダメだ……」

「人の家に遊びに来るなり暗いなヒメちゃん」

「冬はね……虫があんまりいないの……」

「まぁなぁ……」

「寂しい……」

「あと一、二ヶ月もすればイヤっていうほど沸いてくるさね。我慢我慢」

「うう……インフルエンザウィルスなら外にいくらでもいるからウチに呼んでいい……?」

「帰れ」

「……よよよ」


ニ月八日
「春はまだー……?」

「まだいたのかヒメちゃん」

「……ミっちゃんが冷たい」

「冬だからなぁ」

「うう……」

(いやぁぁぁ剥かないでぇぇぇ)

「へへへ。お前から余計なものを剥いでやるよ。そして美味しく頂いてやる」

(この外道ぉぉぉ)

「……なにブツブツ言いながらミカン食べてるの」

「いやヒマなもんでついつい」


ニ月九日
「あ、しまった」

(あああああああああああ!?)

「いやごめんって障子」

(年末に張り替えてもらったばっかりなのに……穴開けちゃうなんて……)

「うっかりしたぜ」

(みっともないから早めに張替えお願いしたいっ)

「うん、まぁ。年末には張り替えるよ」

(ああああああ……)


ニ月十日
「お高く止まりやがって……」

(ち、違うの……私、そういうつもりじゃ)

「ふん。どうだか」

(私だってなりたくてこうなってるんじゃないの! わかって!)

「そう言われてもな。こんなんじゃ気軽に……とは言えないしなぁ。まったくお寒い話だぜ」

(そんなこと言ったって。……言ったって)

「あー寒い寒い」

(……私が自分で値段つけてるわけじゃないもの! どうしようもないじゃない!)

「……すまん灯油。最近お前の値段高いから八つ当たりしてみただけ。……ほんとに寒いなぁ今日は」


ニ月十一日
「結構前からどこからともなく声が聞こえてくるんだが何の声だろう……」

(助けてー)

「とりあえず視界に入るモノの声ではなさそうだが」

(暗いよーここから出してー)

「どこだ……?」

(ここ、ここだってば! ホコリ多いしもうイヤだー)

「どこ……ってああ、ココか!」

(やっと出られたぁ)

「本棚の後ろに雑誌を落としてたとは迂闊だったぜ」

(まったく酷い目に……)

「やれやれ。古雑誌はちゃんと回収に出さないとな」

(……えーん)


ニ月十ニ日
(ちゃらりらりらーん)

「何してるんだ毛糸玉」

(見て見て毛糸玉七変化ー……マフラー!)

「おー」

(手袋)

「暖かそうだ」

(セーター!)

「いい感じじゃないか。……マフラー辺りのままで固定してくれないか? ちょうど新しいのが欲しいと思って……」

(甘えんな! 自分で編もう!)

「……はい」


ニ月十三日
「明日はアレだねっ委員長っ」

「そうね小雪ちゃん」

「というわけで手作りとか用意してみたけどもっ。どうしても形悪くなっちゃったよっ」

「私は完璧」

「……むむっ」

「私は完璧な仕上がりよ」

「むむむっ」

「ふふふ……」


BACKTOPNEXT