「こらー。お前ら静かにしろー。……こらー」

ぎゃんぎゃんと騒がしい教室の中、教卓に立っているゴンゾウは投げやりな様子で生徒たちに注意している。

「こいつら全ッ然静かにならねぇな……」

やがて諦めてきたようで、大きく肩を落とした。

ここはとある個人経営の塾。

今日は臨時の講師としてバイトに来ていたのだが、目の前の小学生たちはまるで大人しくする気はないようだ。

好き勝手に歩き回り、漫画を読み、生意気にも携帯電話をいじってる生徒もいた。

もはや教室はサル山と化していた。

普段ならこんな子供に舐められるようなゴンゾウではないのだが、今回はどうにもこうにもやる気が出ない。

もう適当に時間が過ぎるのを待つことにしようと考えていた。

どうせ一週間だけのバイトなのだし。

しかし、そもそも何でこんな仕事をするはめになったのか。

ゴンゾウは先日のことをぼんやりと思い返していた。







「そーれぃ」

昼休みのキャンパスに、鋭い音が鳴り響いている。

「そりゃっ」

ずばん、ずどん、と重い音に、周辺を歩く学生たちが何事かと視線を向ける中で。

「てやーっ」

ずばし。

「おらっ」

ずしん。

ヒカルとゴンゾウはキャッチボールをしていた。

すらりと体格の良いゴンゾウと、どう見ても女子中学生くらいの容姿のヒカル。

明るいお日様の下、仲良くボールを投げあう二人のその姿は一見したところ仲の良い兄妹のようにも見え、実に微笑ましい。

だが、彼らの投げ合うボールのレベルが異様だった。

「やぁー」

ヒカルは朗らかな笑顔で、先ほどからナックルや高速スライダーなどの多種多様な変化球を繰り出しているし。

「せいやっ」

ゴンゾウはゴンゾウで、爽やかなフォームで、ボールが目視できないほどの剛速球を叩きつけるように投げつけている。

そしてそれを難なく受け取り、投げ返す二人。

見物人に、何だか物凄く勿体無いという感情を抱かせるレベルのキャッチボールで、ヒカルとゴンゾウは優雅な昼休みを過ごしていた。

そこに、一人の中年の男性が現れた。

「やぁ、キャッチボールとはなかなか健康的でよろしいな。はっはっは!」

いきなり近づいてきた男性は、ヒカルの尻をぱしりと叩く。

彼はこの大学の教授で、ヒカルたちが取っている講義をいくつか担当しているので顔見知りなのであった。

ちなみに今の行為はセクハラ的な意味ではなく、元気の良い子供にちょっかいかけるようなつもりでの行動だった。

しかし、タイミングが悪かった。

「うひゃ!?」

キャッチボールに専念している時に不意を疲れたヒカルは、驚いて身をすくめてしまう。

そしてそれが非常に不味かった。

「……ヒカル! 危ない!」

ゴンゾウの投げた剛速球が体勢が崩れたヒカルと教授に襲い掛かる。

「「ひえぇぇぇ!」」

ヒカルと教授は悲鳴を上げてしゃがみ込み、何とか死神の鎌から逃れた。

的を失った球はキャンパスを突っ切り、木陰に停めてあった車のフロントガラスに突っ込んで。

粉々に砕いて。

ハンドルを吹き飛ばし。

シートに突き刺さったところで、しゅうしゅうと煙を立てつつ、ようやく止まった。

レールガンか何かかよ、と青ざめた様子で周りの学生の誰かがぽつりと呟いた。







「私の……車が」

がっくりと地面に膝をつく教授。

「あー……教授のお車だったんですね」

何とも言えず、ヒカルは曖昧な笑顔を浮かべている。

ゴンゾウは早くも逃走の準備に入っていたが、ヒカルの冷たい視線に射抜かれて動きをとめた。

「いやー。そういう目で睨まれるのもイイな。ぞくぞくした」

「いやいやいやいや。何でだよ」

何故か恍惚とした様子で近寄ってくるゴンゾウに、とりあえずチョップをかましておくヒカル。

魂の抜けたような顔でへたり込んでいる教授の前にヒカルは立つと、頭を下げた。

「ごめんなさい教授。あの……修理代は、何とか払いますんで……」

「えー。教授がヒカルの尻を撫でたのが悪いんだろ。何でヒカルが修理代払うんだよ」

口を尖らせるゴンゾウの太股の内側に、ヒカルは鮮やかに回し蹴りを放つ。

「ぬぉぉおっ!」

「ボールを投げた本人がそういう態度をとらない! しかも修理代、ぼくにだけ払わせるつもりかー!」

目を吊り上げさせているヒカルを見て、教授はふっと笑うと立ち上がった。

ぽんぽんと膝を払いながら、苦々しい様子で微笑んだ。

「彼の言う通りだな。私が軽率だったんだよ。それに教え子に修理代を請求する気もないさ」

「教授……本当にすいません」

「よ! 太っ腹! ……おいおいヒカル、そんなに睨むなよ。興奮しちゃうじゃないか」

一人朗らかなゴンゾウをヒカルはじっとりと睨んだが、喜ばれてしまった。

「バカッ! ……でも教授、それじゃあぼくたちの気が済みません。せめて何か出来ることはありませんか?」

そうだな、と顎に手をあてて少しだけ考え込む様子を見せた教授。

何かを思い出したようで、ぽんと手を打った。

「そうだ。塾を経営している知人がいてね。バイトが何人か急に辞めて困ってるんだ。もし良ければ一週間ほど手伝ってやってくれないだろうか」

「はぁ? めんどくさ……ぐぼっ!?」

ゴンゾウの鳩尾を肘で打ち抜くと、ヒカルは満面の笑顔で頷いた。

「わかりました。ぼくたちに任せといて下さい!」









以上が、ヒカルとゴンゾウが塾でバイトすることになった経緯である。

一応バイト代は貰えるが、大した額でもないし、そもそも子供の相手をすることが非常に煩わしい。

もう今日で三日目だが、やる気のまるで無いゴンゾウは、もはや学級崩壊しているクラスをだるそうに眺めていた。

まぁどうせプリント配って解答読み上げるだけでも仕事したうちに入るしなー、などと教育を舐めたことを考えている。

そうこうしているうちに授業の終わりの時間が来た。

ゴンゾウが何か言う前に生徒たちは勝手に鞄を持って、教室を飛び出していってしまった。

「あー……だるだる」

プリント類などをまとめると、ゴンゾウも子供たちに倣って教室を出て行く。

ふとドアの開いていた隣の教室に目をやると、そちらでは生徒のほとんどがまだ残っており、講師を囲んで話をしていた。

「ヒカルは順調みたいだな」

ついでに様子を見てみようと、中を覗き込む。

この教室は中学生が集められており、担当はヒカルだ。

中学生に囲まれているヒカルは、やっぱり中学生くらいにしか見えない。

講師というより、転校してきたばかりで質問攻めにあっている転校生のようである。

楽しそうに話をしていたヒカルだが、ゴンゾウに気付くと輪の中から抜け出る。

「木下、そっちも終わった? じゃあ事務室に戻ろうか」

キミたちも寄り道しないで早く帰るんだよー、と生徒たちに告げる小走りにゴンゾウの下に駆け寄ってきた。

「「ヒカルちゃんバイバーイ」」

「はい、バイバイ」

教室の中に向かって小さく手を振ると、ヒカルはゴンゾウに顔を向けた。

「さ。後片付け済ませて。ぼくらも帰ろう」

「……おう」







その日の帰り道、ヒカルは今日の出来事を楽しそうにゴンゾウに語っている。

「いやー。センセイってのも悪くないよね。ぼくってば意外と教育者に向いてるのかも」

「そうだなヒカルちゃん」

からかってくるゴンゾウを一瞬だけ睨んだが、下を向いてため息を一つ吐くとすねたように唇を尖らせた。

「ふんだ。わかってるよ。ぼくは見た目がこんなんだからトモダチ感覚で懐かれてるだけさ。ホントのセンセイは厳しそう」

言いながら薄い胸を撫で、ぼやくヒカル。

童顔かつ幼い自らの体型に不満を持っているのかもしれない。

「オレは別に何も言ってないんだけど。それにお前の見た目は最高だろ」

言いながらヒカルの尻を撫で、励ますゴンゾウ。

彼にとってはヒカルの容姿は、不満どころか大好物のようである。

ぎろり、とゴンゾウを睨むヒカルだが、睨んでも彼が喜ぶだけなので深くため息を吐くだけで済ます。

「……で。そっちのクラスの調子はどうなの。何かうるさいけどさ」

「ダメだな。全然ダメ。俺はサル山の飼育員じゃねぇっつの」

お手上げするゴンゾウ。

「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー騒ぎやがってからに。もうオレにはムリムリ」

「あのくらいの年頃は確かに難しそう。注意しても聞かないだろうし」

でも、とヒカルはゴンゾウの顔を覗き込むと、小さくガッツポーズをする。

「せっかく任されてるんだからさ。もう少しがんばってみようよ、ね?」

そして満面の笑みで微笑んだ。

その笑顔に打ち抜かれたゴンゾウは、拳を固く固く握り締めた。

「が、頑張っちゃおうかな」

「うん。がんばっちゃって」

「……頑張るぜぇぇぇ!!」

薄暗い道に、ゴンゾウのやる気の炎が燃え上がり。

そして翌日から、子供たちの地獄が始まった。







「うるせぇぇぇぇ!!」

狭く小さな教室に、怒号が響き渡る。

いつものように騒いでいたところを怒鳴られて、固まってしまう生徒たち。

視線が集まる中、ゴンゾウはやる気に満ちた表情で教卓に立っている。

今日のゴンゾウは自分なりに真面目にやる気でいるのだ。

しかし、その情熱も生徒たちにとっては関係のないもの。

昨日までやる気なさげにしていたゴンゾウにいきなり怒鳴られても戸惑うばかりだ。

一瞬静まり返ったが、すぐに元の喧騒を取り戻す。

それどころか、前の方に座っていた男の子たちはゴンゾウに野次を飛ばし始めた。

「いきなり熱血してんじゃねーよ」

「そうそ。ちゃんとやってやるから、とっととプリントだけ配ってくれっての」

今までの講師たちなら、ここまで罵られれば怒りに燃えて喚き散らすか、諦めるか。

気の弱い講師なら半泣きで助けを呼びに行ってしまうこともあった。

しかし、ゴンゾウはそのどれとも違った。

「やかましいわぁ!」

叫びつつ軽く跳躍し、空中で大きく身体を捻ると、野次を飛ばした男の子に空中回転蹴りをぶち当てる。

「……え?」

蹴られた瞬間の男の子の顔は、戸惑いと驚きに満ちていた。

そしてそんな表情を浮かべつつ、男の子は蹴られた勢いのままに、吹き飛んでいった。

いくつかの机を飛び越え、ぽてりと床に落下する男の子。

「「……」」

静まり返る教室。

だが、床に倒れたままの男の子を見下ろしていた生徒たちは顔を引きつらせている。

「ひ、ひと……」

「黙れ」

人殺し、とでも言いかけたのだろう女の子を、ゴンゾウは睨みを利かせて黙らせる。

息を呑んで黙り込んだ女の子を見て満足そうに頷くと、ゴンゾウはゆっくりと教室を歩き回る。

「いいか。俺は気が変わったのだ。真面目にお前らに勉強を教えてやることにした」

ぐるりと首をめぐらせて教室を見渡す。

「だから黙って座ってろ。騒いだら、ああだ」

言いながら、床に倒れ伏す男の子をくいっと親指で指し示す。

「な、なんだよ。ガキを脅して楽しいのかよ!」

「そうよ! それにさっきのはタイバツだわ! お母さんに言いつけてやる!」

何とかいつもの自分たちの調子を取り戻そうと、幾人かの生徒が無謀にも再び騒ぎ出す。

「黙れっつってんだよ」

ゴンゾウはそれを無造作に拳と蹴りで吹き飛ばした。

声も無く吹き飛んでいく子供たち。

あまりの理不尽さに、今度こそ生徒たちは完全に黙り込む。

「オレはな。体罰には賛成派なんだよ。口でわかればそれが一番だが、わからんもんは仕方が無い。身体にわからせるしかねぇ」

よって! と一喝しつつ、机を叩くゴンゾウ。

その音で生徒たちは竦み上がる。

一部の生徒たちはすでに半泣きだ。

「オレが担当する残りの授業。騒いだら、殴る。歩きまわったら、蹴る。意味のない口答えした者は、投げる。……わかったな?」

「「わかりました先生!!」」

ほとんど悲鳴のような声で一斉に返事をする生徒たち。

それを満足そうにゴンゾウは見渡すと、プリントを配り始めた。







それから数十分。

授業態度が良くなったが、内容はプリントを配って解かせるだけというのは変わらない。

静まり帰った教室にシャーペンの音だけが響いていた。

吹っ飛ばされた子供たちも息を吹き返し、席に着かされている。

黙々とプリントをこなしている生徒たちに、ゴンゾウはぽつぽつと語り始めた。

「オレはな。何も腹が立つからお前らを蹴り飛ばしたんじゃないし、黙らせるためだけに殴ったんじゃないぞ」

何を白々しい、と思いつつも打撃が怖いので黙ってプリントにとりかかっている生徒たち。

「子供にビンタしただけで体罰になるような時代で、回し蹴りをかます。オレは相当の覚悟の上でお前らを殴ってるんだ。

お前らは大人を舐めすぎなんだ。良い意味で、大人は怖いものだという認識を持たねばならん。わかるか? これも一種の教育だ」

意外と真面目なこと言ってるかもしれないと、と生徒たちは顔をあげてゴンゾウの顔を見る。

そこには真剣な顔で教室を見渡す、凛々しい青年の姿があった。

「さっきオレに蹴られたヤツ。吹っ飛んだだけで別にもう痛くないだろ? その辺の加減は考えている」

そう言えば、と打撃を喰らった子供たちはお互いの顔を見る。

あれほどハデな攻撃だったのに、今はもう何ともない。

「教育だからな。もしそれでも不満があるなら、親にでも何でもチクるがいい。……覚悟は出来てる」

決意に満ちたその瞳。

ゴンゾウは基本的に黙ってさえいれば二枚目だ。

その真摯な姿は、女子たちの胸を射抜き、男子たちの心を掴んだ。

「先生、俺たちが間違ってました!」

「私たち、先生を誤解してました!」

「そんなに僕たちのことを考えてくれてたなんて!」

感激してゴンゾウの元に集まる生徒たち。

「あはははは。いいんだよ」

ゴンゾウはウソ臭い笑い声をあげながら、子供たちを受け止める。

実は昔読んだマンガの台詞を言ってみただけ、という事実はおくびにも出さない。

安っぽい青春ドラマのような光景がそこにはあった。

結局授業の残りの時間は、そんな戯れで潰れることになったのであった。







バイトの残りの日々は、ゴンゾウにとって実に有意義なものに変わった。

大学が終わればバイクの後ろにヒカルを乗せて塾へ向かい、素直になった子供たちにプリントを配るだけ。

そしてたまにヒカルと夕飯を食べて帰るという日々。

ゴンゾウは充実していた。

そして最後の授業も終わり、教室から去ろうとするゴンゾウに生徒たちが一枚の色紙を差し出してきた。

「何だこりゃ」

「寄せ書きです!」

「先生! お世話になりました!」

「塾の先生辞めても元気でいてくださいね!」

きらきらとした視線を向けてくる生徒たちをゴンゾウは目を丸くしながら眺める。

マジで教育できるとは思わなかったなー。

そんなことを思いつつ、一人一人の頭を撫でてやっていると教室にヒカルが入ってきた。

「やー。盛り上がってるね。正直木下がそこまで立派に先生やれるとは思わなかったよ」

と言っても結局ゴンゾウはプリントを配っていただけだが、そんな余計なことは誰も言わない。

そしてヒカルもヒカルで、自分のクラスでもらった花束を抱えていた。

人気を落とすことなく一週間やり遂げたらしい。

「バイト代も出ることだし、今晩はぼくが奢ってあげよーう。飲もうぜー」

「飲みか! いいねぇ。押し倒すチャンスも作れるし最高だよな!」

「調子に乗らないのっ」

急激にテンションが上がって本音ダダ漏れのゴンゾウの額をぺちりと叩く。

そんな二人の姿を見て、生徒たちはすぐに何かを察したらしい。

ゴンゾウの袖を引っ張ると、教室の隅にまで連れて行った。

「何だよ」

「先生。あの人のこと好きなんですね」

「応援しますよ、僕たち」

「好きなら好きってはっきり言いましょうよー」

「いつでもはっきり言っとるわい。でもなかなか受け止めてもらえなくてな……」

しみじみ語るゴンゾウに、生徒の一人が力強く言った。

「先生が自分で言ってたじゃないですか!」

「んん?」

「口で言ってもわからないなら、身体にわからせるんですよ!」

「それだ!」

確実に間違っている意見に、ゴンゾウは目を輝かせて頷いた。

生徒たちに向かって親指を立てて、ヒカルの元へ戻る。

そんなゴンゾウの背中に向かって、生徒たちは敬礼を送った。

「何話してたの?」

「ヒカル……」

「ん?」

無警戒な笑顔を向けてきたヒカルの頬を、ゴンゾウはいきなり引っ叩いた。

乾いた音が教室に響き、後ろで見守る生徒たちは息を飲む。

「黙ってオレについて来い」

きりりと顔を引き締め、力強くヒカルを抱きしめる。

腕の中のヒカルは、ふるふると身体を震わせていた。

そのまま無抵抗に抱きしめられている。

成功したのかな、とゴンゾウが思いかけた瞬間、股間に強烈な一撃が与えられた。

「……ぬぉぉお!?」

ゴンゾウの身体に鈍痛が走る。

ヒカルがゴンゾウの繊細なトコロに、膝蹴りを叩き込んだのだ。

せつない表情で崩れ落ちるゴンゾウをさらに蹴倒すと、ヒカルはそこに馬乗りに跨った。

能面のように無表情になっている。

「ヒ、ヒカ……ぷわ!? ぶはっ! ぐはっ!」

ぱーん! ぱーん! ぱーん! と思いっきりビンタをかます。かます。かます。

それも一度や二度ではない。

顔に表情を浮かべないまま、何度も何度も往復ビンタを繰り返す。

ゴンゾウの顔がどんどんと膨れ上がっていき、そのうち悲鳴すらあげなくなっていく。

余計なやる気をゴンゾウに与えてしまった生徒たちは教室の端でひたすら震えていた。







「それじゃみんな。また会えたらいいね。バイバイ」

気が済んだのか、にこやかな笑顔に戻って去っていくヒカルと。

「耳が……耳が聞こえない……」

ビンタを喰らいすぎて鼓膜がヤバイことになっているゴンゾウの姿が対照的だ。

それでもふらふらしているゴンゾウの腰のベルトを引っ張りながらヒカルは歩いていく。

放置する気まではないようだ。

「何だかんだで仲良いのね……」

「でも調子に乗っちゃダメなんだなぁ……」

「「むずかしいなぁ」」

生徒たちは二人を見送りつつ、ゴンゾウの幸せをそっと祈るのであった。






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